ランボオの思わずもれた慨嘆は、とても味のあるフレーズが多く、前から集めてみたいと思っていました。



できない、わけですね。アニマに仕返しするなど、どう頑張ってもできません。






これは詩集「地獄の季節」の「地獄の夜」からです。書き出しから「私は大量の毒を一気に飲みほした」で始まっており、麻薬か酒タバコか、手持ちの毒を一気にやったのでしょう。詩中にも幻覚の嵐に見舞われている様子が書かれています。
ユング心理学によれば、影・アニマ・老賢者という性質はシームレスなものです。ランボオが詩に引用しているのは主にアニマのセリフですが、アニマは名乗ったりしません。よって、ランボオの理解では、その時の情況やセリフの内容によって、彼女らがマドンナであったり、サタンだったりするわけです。
ところで、アニマのひとつ上の段階である老賢者は、精神のクライシスの時にだけ現れ、危機を救う性質の者だとされています。混乱のあまりそれをも蹴っ飛ばしていたのだとしたら、収拾がつかなくなったとしても仕方のないことだったしょう。




けれども、私たちをおとなしくさせる女吸血鬼は、こんなふうに命令するのだ。私たちは彼女に残してもらったもので楽しくやるがいい、さもなければ、もっと滑稽なものになってくれるがいい、と。

イリュミナシオン。「不安」より