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「絵日記クラブ」
2017/02/28 松本零士メーターウォッチ ![]() 時計が画像に写っているが、松本零士の「零士メーターウォッチ」だ。 横にあるくすんだ時計もあわせて電池が切れていたので、今日、時計屋に行った。 集合店舗ビルに入店している店だが、道端で見かける独立店は駐車場がないので入る気はしなかった。 「ふーむ、これですかぁ」 向こうむきに座っていた店員は振り向くと、私がごとりと時計を置くなりそう言った。若いが、畑正憲のような喋りだった。 「電池を替えてほしいのです」 私の注文が全く耳に入っていないかのように、タクっぽい店員はリューズをいじり、針をくるくる回して楽しんでいる。自分の世界に入ってしまう人材のようだった。返答がない。目つきが一点に集中している。 「これおかしいですよ。赤と黒の針が一緒に動いています」 「それは、どっちかが時針で、どっちかが分針なんだと思います」 私は「零士メーターウォッチ」の仕組みなど知らなかった。大体実用品ではないし、装用したことさえなかった。 「はあー、どっちかが時針で、どっちかが分針なんですね」 私はだんだん腹が立ってきた。店員は、他のリューズもいじりはじめた。すべてのリューズを把握しないと電池交換に進めないのだろうか。 「それは、押すとライトがつくのです」 見かねて、私は説明してやった。 「押すとライトがつく・・・!」 店員は目を見張った。 「電池交換がして欲しいんですが」 私は重ねて要望した。その仕事にはリューズなどあまり関係ないはずだ。 「はい」 店員は、一応自分のやるべき仕事については飲み込めているようだった。 時計の電池交換に時間がかかることは分かっていたので、私は他で時間を潰した。エフェクター用の角電池が欲しかった。 頃合いをみて店に帰った。 「先ほどは申し訳ありませんでした。作業には20分程かかります。待合番号札を渡していませんでしたので、これを持ってお待ちください」 紋切り型の接客マニュアルを思い出したようだった。 私は4番の待合札を貰ったが、他に客などいなかった。 捨てるわけにもいかず、苦々しい思いで番号札を右手に持って、陳列棚を見て時間をつぶした。 時計ならシチズンが好きだ。手首が細いので、女物の時計が欲しいと思っている。 (絶対、買わんからな) 私は自分に言い聞かせた。キラキラ光る時計は11万円だ。そんな金は絶対にない。 店員が、できましたといって会計に来た。リューズを押して言う。 「こんな風に光るんですね。オッ・・・」 時計の動作になにか感動したようだった。真顔で驚いていた。 |