ちょー能力研



〇 てれぱす


以前、出会い系サイトで、超能力者と出会ったことがあった。
LINEまで進んだ。
写真を送ってくれというので、(なんだおれの顔に興味があるのか)と思いつつ近影を見せてやった。これはイケるかもしれない。
あとで気づいたことだが、それはリサーチする手がかりだった。
侵入系の超能力には媒介が必要らしいのだ。
深夜のチャットでこう切り出された。
「虫歯があるよね?」
「うん、あるよ」
「左上の奥から二番目」
私は舌先で、痛むところをなぞってみた。
「違うな。一番奥だ」
「うそ。二番目じゃない?」
私はもう一度、舌先で確かめた。
「いや、本当だ」
「おかしいなあ」
わずか三日でこのロマンスは破談になった。
後日、歯痛に耐えかねて歯医者に行くと、訂正された。
マッシュルーム・カットの似合わない男が上から告げた。
「いや、奥から二番目です」
「違いますよ。一番奥が痛むんです」
「それは感覚の錯誤です。歯の神経なんてそんな精妙なものじゃない。よくあることです」
私は暗澹たる心持ちになった。
(そんなバナナ)
歯科医は、私の訴えを無視していそいそと施術した。そしてそれで、痛みは消えた。
こんなことがあるまでは、平気でSNSに顔写真を貼り付けていたが、以来やめた。